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Amazonのレビューとか見てると、微妙かなと思ってなかなか手をつけてなかった「SOSの猿」。
「孫悟空」と「エクソシスト」が登場するなんとも奇怪なお話です。
ハードルをかなり下げて読んだからか、結構面白いじゃないですか!
たしかに、伊坂初期のころのような畳み掛けるような伏線回収のラストではなかったですが、
キャラ設定や軽快なトークは健在。
わたしはミステリー要素よりも伊坂さんが作るキャラクターが好きなんだなと思ったり。
登場人物は間違いなく面白いです。レビューで尻込みしてる方はぜひご一読を!
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「孫悟空」と「エクソシスト」
話は、三百億円の損害を出した株の誤発注事件を調べる男と、ひきこもりの少年を悪魔秡いで治そうとする男。の2つの軸で進んでいきます。
そこに孫悟空が現れる。(主に三百億円男の方に出てきますね。)
誰かのあだ名とかではなく、本当に孫悟空が出てきます。
フィクション?ノンフィクション?
その辺が曖昧なグチャッとなってどちらとも取れるような。
(読んでみてください。分かります。)
「孫悟空」と「エクソシスト」の一見関係なさそうな2つの軸がどう繋がるのか。
まぁ繋がってるとも言いがたいんですが、これも読んでみてですね。
新しい伊坂さんを見た感じがしてわたしは読んでてとても楽しかったです。
因果関係はどこまで遡れるの?
孫悟空が出てきてこんなことを言うんですね。
誰かがコップに水をいっぱい注いだの。表面張力のぎりぎりのところまで。
で、そこを通りかかっ通りかかった誰かが、ふと一滴垂らしたら、水がこぼれたの。
こぼれたのは誰のせい?いっぱいにした人かしら、それとも最後の一滴の人かしら。因果関係はどこまで遡れるの?
こういうテーマ好き!
この猿けっこうしつこくて笑
出てくるたびに耳元でささやきます。
お師匠様、本当に悪いのは誰なんですかね
三百億円の損害を出した株の誤発注事件は、どこまで遡ったんでしょう。
SEの人は好きなんじゃないかな
三百億円の損害を出した株の誤発注事件はSE(システムエンジニア)に人がメインで調査が進みます。
SEの業務に関する話とか、ITに疎い人はスッと頭に入ってこないような内容もあったりして、
この辺も評価が低い理由になってるのかなと思ったりします。
原因を究明するなんて、SEの仕事らしいというか(SEの仕事なんてほぼ原因究明じゃないかと思ったり)、とにかくITの知識ある人のほうが内容がすっと頭に入りやすいと思います。
システムの話はオチ辺りにも絡んできますからね。
テーマとキャラと会話でグイグイ読める
読む手を止めたいとは思わなかったです。
これまでの(「あるキング」以外)作品同様、グイグイ読めちゃいます。
「猿の話」も「私の話」もどちらの物語の軸も魅力的でキャラが立ち面白い。
2つの話がどう繋がるんだろうか、因果関係の話の終着点はどこだろう、孫悟空なんて登場させてどういうつもりなんだ、これはフィクションなのか?ノンフィクションなのか?
すっかり物語に入っちゃって、夢中になって読んでました。
爽快なラストではないが、伏線は回収してる
畳み掛けるような爽快なラストではないですが、微妙に散りばめられてた伏線はちゃんと回収されてます。
(伏線がしょぼいんですが、それは置いておいて笑)
気づいた部分もあるし、気付かなかった部分もあるしといった感じで。
たぶんちゃんと読んでいれば全部わかると思います。
(もしかしたら途中でオチまで見えるかも)
伏線回収されてるものの「ん?」って感じを持ったことも否めませんが、
とにかく回収はされてます。
因果関係の結び方も程よくて個人的には満足です。
まとめ
「SOSの猿」の感想でした!
レビュ-で期待してなかった分、思ったよりは面白かったです。
伊坂初心者におすすめすることはありませんが、ある程度読んでいて、伊坂幸太郎自体が好きな人にはぜひ読んでおいてほしい作品ですね。