
2000年から2010年までの10年間のエッセイが詰まった1冊。
まとめというには十分すぎるボリュームで、最近流行っているnoteなどの情報商材とは比べ物にならない程の価値があります。(わたしにとっては)。
タイトルの「3652」は10年間の日数ですね。365日×10年+2(うるう年が2回)で3652。
エッセイなので、伊坂幸太郎自身が主人公。
伊坂幸太郎という人物をより深く知れるし、作品の裏情報も満載!
伊坂作品をほぼ網羅しているようなコアな伊坂ファンにおすすめしたい1冊です。
貴重な10年分が詰まっている
10年てすごい長いです。
人間は長くても100歳までしか生きられない。
その中の10年分の情報を分けてくれるわけですからこんな贅沢なことはありません。
ただの10年ではなく、デビューしたてのころからトップクラスを走り続ける伊坂幸太郎の10年だからこその価値があります。
何を思いながら小説を書いてきたのか?
伊坂幸太郎の小説家としての10年が見れたことに喜びを感じてました。
サラリーマンと作家の兼業
元々SE(システムエンジニア)だったというのは知っていましたが、具体的なエピソードは知りませんでした。
処女作の「オーデュボンの祈り」はサラリーマン時代に描き上げた作品で、その「オーデュボンの祈り」が新潮ミステリー倶楽部賞をとったあとも、小説家1本にするかサラリーマンとの兼業でやっていくか、
悩んでいたある日。
ある1曲に出会い、辞めることを決意するんですよね。
これはあまりにも有名なので、分かる人は分かってしまうと思いますが。
本人の言葉でこの辺りの具体的なエピソードを聞けてめちゃくちゃ嬉しかったです。
今の伊坂と昔の伊坂
本の構成として、
過去に書かれたエッセイが並ぶ形なんですが、
その一つ一つに現時点の「思い」が書かれています。
「振り返ると、あの時は○○でしたねぇ。」みたいな。
伊坂さんが「当時思っていたこと」、それに対して「今思っていること」、の両方が知れるお得感。
堪りません。
伊坂幸太郎に近づける
エッセイですから、基本的には伊坂幸太郎の身近なことが文章の中心にきます。
どこどこに行った、好きな音楽、好きな作家、物事の捉え方、影響を受けたもの、など。
わたしは普段あまり小説を読みませんが、伊坂幸太郎が好きな小説は読みたいなって思います。
(よく分からない感情ですが・・・。好きな人に近づきたい的なあれかな?)
今思えば、斎藤和義を好きになったキッカケも伊坂幸太郎でした。
ボブ・ディランも。
自分自身がどんどん伊坂幸太郎に侵食されていく・・・。
小説とは違う文体
小説を読むつもりで読むのはナンセンスです。
エッセイですから。
小説のように洒落た文章ではなく、伊坂幸太郎の本来(?)の言葉で書かれた文章です。
最初は小説とのギャップに戸惑うかもしれません。
それはそれで良かったりするのですが。
作品の裏話が満載!
時系列に10年分のエッセイが詰まった作品なので、場面場面で作成された作品についての言及がたくさんあります。
○○の経緯で作ることになった。作風は○○をイメージしている。こういう気持ちで書いていた。
などなど、一度読んだ作品って自分の中でイメージが出来上がっていると思いますが、
この「3652」で綴られる裏話を聞くと、また違ったイメージが作品に対してできあがると思います。
特に「魔王」についての言及が多かったですね。
まとめ
伊坂作品を網羅しているようなコアな伊坂ファンにおすすめしたい本です。
ファン向けの本というか。
伊坂幸太郎自体が好きな人には堪らない1冊ですね。